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霊的動画批評第2回「まほらば」

▼チャオ。賢明なる読者諸君。前回の修行から二ヶ月が経過しておりますが、その後お体の調子はいかがでありましょう。復習がてら前回のポイントをおさらいしておこう――と、思ったのだが前回なにを書いたのか忘れた。

▼まあ良い。さて、今回は趣向を変えてテーマを『癒し』としよう。これは重要である。考えてもみたまえ、RPGに回復魔法がなければどうであろう?序盤のスライム程度になら余裕で勝てるであろう、しかしそれでも無傷とは行かぬ。回復しなければいずれは死に至る。『癒し』の力を身につけることが諸君らの最優先ミッションであった。すっかり失念していた。

▼それではまず諸君らにやってもらうことがある。自分は前回、創世のアクエリオンという教材を用いて何がなんだかわからないことを言っていたと思うのだが、それを忘れろ。忘れるということは救いである。人間があらゆることを覚えているとしたらこれは大変な苦痛になる。忘れる=癒し、まずここから諸君らは学ぼう。前回のことは小さなシナプスのひとつまで、心の火炎放射器で憎しみを込めて巨神兵を焼き殺すように念入りに灼滅せよ。

▼完了したら身近なレンタルショップへ行き「まほらば」という名前のアニメをレンタルすべし。
合成着色料が殺人的に使用された駄菓子のようにバキバキの原色で塗られた色とりどりの髪、オタ臭い太い線で縁取られた絵、とりあえずでかい目、完全に記号化されたキャラクター、諸君らが前回の修行を真面目にやっておれば、オーラの色で発見可能である。
修行はもう始まっている。
諸君らがもし、少しでもお洒落キッズorトンガリキッズぶってこのDVDをレンタルショップの店員に見られることを怖れたなら、それは幻魔に精神を蝕まれている証である。
まさかとは思うが、毛唐どもの娯楽映画と抱き合わせでレンタルし「いや、オレ本当はこっちが見たいんだけど、このアニメ甥っ子が見たいって言うからさ」的な言い訳はしておるまい。もししていたならば銃殺刑ものである。
むしろここはロリコン・コスプレ・監禁拘束もののAVと一緒にカウンターに持っていき「早く帰ってこのアニメ見てハァハァしてえんだよ!口からクソ垂れる前にさっさとバーコードチェックしやがれ!」くらいの鬼気迫る勢いで店員を一〇〇メートル引かせる心意気が必要である。
ちなみに自分はこれを極め、店員を吹っ飛ばして背後のコンクリートにヒビを入れる、という大友克洋的エフェクトな霊的攻撃を可能にしている。

▼教材をゲットしたら修行を始めよう。「まほらば」は善良かつ優良な霊的教材である。なにせサブタイトルが「サプリメントアニメ」なのである。
もちろんサプリメントも大量摂取すれば凶悪なドラッグ。
すぐ大量摂取せよ。

諸君らが、借りてきたDVDを全巻一気見しておるその間にあらすじを紹介しよう。

専門学校(大学でも就職でもないところに霊的なリアリズムを感じる)に通うために東京にやってきた主人公白鳥隆士が、たまたま住むことになった鳴滝荘というボロアパート。そこには五人の住人と、とそれを見守る大家さんが……そして白鳥君は大家さんと恋に落ち……説明が面倒だ

要するに安心出来る王道ジャパニメーションストーリーである。
「めぞん一刻の焼き直しかよ」
とか
「ラブひなっぽくねえ?」
とか、そういうヌルい突っ込みはやめて止めて頂きたい。
この物語はご都合主義的ユートピアドラマとは違う。
元リスカ女、貧乏、作家ワナビーなど、それぞれ心の傷を抱えた者の恢復を描いた大江健三郎的純文学作品なのである。
彼らを見守る大家さん、蒼葉梢もまた乖離性人格障害という重大な病に冒されている。
梢嬢の人格は、普通の女の子、コスプレナース、ロリ白痴、ツンデレ暴力、ネクラ手品……一粒で五つの味。
梢ちゃんとつき合いたい
(多重人格の方はとりあえず「QJ編集部・めろんガールコンテスト」まで写真を同封して頂きたい。コスプレイヤーも可)
さあ、それではDVD鑑賞が終わったころかと思う。
いかがだろう。
なんだか脳内麻薬が通常の二〇倍くらい出ているような気がしないだろうか?
そう、そのまま諸君らは近所のボロアパートに駆け込むのである。
そしてこう言おう「すいません!ここが鳴滝荘ですよね!ぼく白鳥隆士です!」と。
そのまま小一時間押し問答すれば警棒を携えたポリスメンがやってくるはずである。
戦え

そうすれば優しい大家さん(看守)や楽しい住人(服役囚)たちとのサプリメントライフ(精神安定剤漬け生活)が待っている。
しっかり恢復したまえ。
あ、アニメの最終回が始まる。
インターネットラジヲも聞いておくように。
ではまた次回お会いしよう。

獲得した能力:〈アニメ批評力+50〉〈社会性-100〉〈前科+1〉

(初出:QuickJapan)

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